ムラムラ村正の部屋

おっさんが模型を作ったりフィギュア眺めてはぁはぁいう場所です。

ガレージキットの作り方(表面処理編)

どうも、村正です。

軸打ちをして表面処理に入るわけですが、表面処理と聞いたらヤスリで削るというイメージを持つ方が大半じゃないでしょうか。概ねそのイメージで問題ありませんが、どういう目的で表面処理をするのかしっかりとイメージすることが大事かなと思ってます。

表面処理と一口で言っても「湯口、パーティングラインの処理」「気泡埋め」「嵌合調整」「歪み取り」と色々あります。

また電動工具や特殊形状ヤスリがあれば楽になることがありますが、今回は初心者向けということで基本的なスポンジヤスリと紙やすりを使ったやり方をご説明します。

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適切な箇所(ゾーリン)に適切な力(セラス)で適切な道具(ヘルシング本部の壁)をあてる事がヤスリがけのポイントです。

 

湯口、パーティングラインの処理

ガレージキットは複製するためにシリコンの型にレジンを流し込むわけですが、そのシリコンの通り道にできる余計な部分が「湯口」、型と型の境目にできる段ズレやバリが「パーティングライン」です。

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複製は型と型を合わせてレジンを流し込むのが基本

この不要な部分を削っていくのですが、大事なのは不要な部分を削りつつキットの造形を潰さないことです。

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脇や肩甲骨の窪みにパーティングラインが走っており、ディテールを損なわずにパーティングラインだけを削る必要がある。

では実際のやすりがけの手順ですが、私は240番400番600番でやすりがけをしています。一番最初の240番は紙やすりを使いますが、そこから状況によって紙やすりかスポンジヤスリか使い分けます。役割としては、240番紙やすり=湯口・パーティングラインの除去、240番スポンジヤスリ=面の均し、400〜600番のやすり=240番でついたやすり傷の消去といった感じで使い分けてます。

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紙ヤスリは2cmぐらいの短冊に切っておくと使いやすい。

 

ヤスリのレビューについてはこちら

 

CASE1:段ずれも小さく、ディテールが複雑でない部分

まずは240番紙やすりでパーティングラインを消していきます。240番の紙やすりは狙ったところにヤスリを当てやすいのですが、傷が大きく残ります。

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傷を恐れて400番で磨くと時間がかかる上に余計な部分が削れてしまうので、恐れずに削ろう!

そこで400番スポンジヤスリ、600番スポンジヤスリで傷を消しつつ表面を均していきます。スポンジヤスリは楽に削れてかつ曲面を出すのに優れているのですが、反面ピンポイントで削りたい部分に当てるのが苦手ですので、削りたくないディテールに当たってしまう場合は400番以降も紙やすりで対応しましょう。

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400番、600番でヤスリ傷を消していく。これより細かい傷は塗装でほぼ見えなくなる。

CASE2:段ずれが大きく、ディテールが複雑でない部分

240番紙やすりでパーティングラインを消すのは同じですが、大きく削ったためにパーティングラインの部分が平らになってしまいました。そこで240番スポンジヤスリで表面を均して曲面を復活させてやります。その後は同じく400番スポンジヤスリ、600番スポンジヤスリで傷を消していきます。

CASE3:段ずれがさらに大きかったり、抉れていたりする部分

段ずれがあるだけじゃなく、シリコン型が食い込んで抉れているようなパーティングラインも中には存在します。その場合、やすりだけではキットの形を大きく損なう為、一旦シアノンを盛ってからヤスリがけをしましょう。後の工程は上のケースと同様に削っていきます。

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シアノンは硬いので、紙やすりで処理するのがおすすめ。(理由は後述)

CASE4:ディテールが複雑な部分

他のディテールを潰さないように、ピンポイントで紙やすりだけで240番、400番、600番まで仕上げていきます。入り組んだところをヤスリがけしていくには紙やすりを折り曲げたり、当て木に添えたりして処理していきます。紙やすりはスポンジヤスリほど楽ではありませんが、使いこなすとコスパ最強の万能のヤスリへと進化しますのでおすすめです。

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プラ板をピンセットで挟んで磨けば程よくテンションがかかって奥まで磨けるぞ!

またヤスリ以外にもパーティングラインの処理にオススメな道具がたくさんありますので、興味があれば探してみてください。私のおすすめツールをまとめた記事もありますのでそちらもよければ参考にしてみてください。

気泡埋め

レジンキットには気泡がどうしても発生してしまいます。気泡の原因は流しこんだレジンに空気が混在していたり、硬化するときの発熱でレジン中の水分が蒸発して出来たりと様々です。業者複製と言われる、プロが複製するものは比較的少ない傾向にありますが、ディーラーさん自身が複製する場合はその腕次第で変わってきます。基本的にどの場合でも気泡に何かしら充填していく方法がとられます。

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気泡 \コンニチハ/

CASE1:大きい気泡(1mm以上)の場合

シンプルにシアノンを充填、硬化させてからヤスリで削っていきます。シアノンは硬化後は白くなるのでホワイトレジンによく馴染みます。またシアノンを充填する前に気泡の中に空気が残らないよう、デザインナイフや彫刻刀などで気泡の穴を広げておくのがおすすめです。

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穴を広げてシアノンモリモリ

シアノンは硬いのでスポンジヤスリで削るとレジンの方が先に削れていきます。そうすると新たな気泡が出てくる恐れがありますので、紙やすりで処理するのがおすすめです。上のパーティングラインの処理も同じ考えですね。

また中にはシアノンにベビーパウダーなどを混ぜて削りやすくする方法もありますが、ドボンした時に流れやすくなる、ベビーパウダーを混ぜることで空気が混ざって気泡ができてしまう事があるので私はやっておりません。

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さよなら気泡くん

CASE2:1mm以下の微細気泡の場合

見つけるたびにうげぇ、、、となるのがこの微細気泡くんです。ホワイトレジンだと肉眼で見え難く、塗装した瞬間にぽっこり穴が空いて気がつく厄介なやつです。とはいえ処理の方法はCASE 1と同じでえぐってシアノンで埋めます。広範囲に及ぶなら大きく丸刀で削ってしまいましょう。またシアノンの色がレジンと大きく違って見える場合は軽めサッとにアルティメットホワイトを吹きかけておくと目立たなくなります。

CASE3:塗装中(サフレス以外)に発見した微細気泡の場合

微細気泡の厄介さは、発見のしにくさにあります。バッチリ表面処理したと思っても塗装を始めてようやく発見できるみたいなことが多々あります。

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塗装すると出てくるこの厄介さ。。。

かと言って見つけるたびに塗装を落としてシアノンで埋めてたらキリがありません。ですが、実はクレヨンを使って非常に簡単に処理する方法があります。クレヨンは柔らかい素材で、ホームセンターでも車や壁の傷の補修剤としても扱われております。気泡にしっかりとすり込んで余分なクレヨンを拭い取って上から塗装してしまえばほぼ分かりません。(サフレスだと下地が見えるのであまりお勧めできません。)

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クレヨンなら気泡埋めも楽チン

この方法はキットの洗浄前にやってしまうとクレヨンも落ちてしまうため、塗装直前、もしくは塗装中に行いましょう。

またクレヨンの気泡埋めについては経年劣化などの検証が十分に行われておりません。クレヨンを使う場合は自己責任でお願いします。

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クレヨンで埋めて一年経過したが、特に変化は見られない。

CASE4:塗装中(サフレス直前)に発見した微細気泡の場合

後の記事で説明しますが、ガレージキットには塗装前にプライマーというものを塗布しますが、プライマーを塗布すると微細気泡が発見しやすくなります。サフレス塗装をする場合は下地が透けてしまうのでクレヨンが使えませんが、クリアを厚吹きしたり、爪楊枝や針でクリアをちょっと流し込んで乾燥させてやると目立たなくなります。

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ちょっと濃いめのクリアで流し込むのがコツ

上記以外にもUVパテやエポパテなどを使った方法もありますので、自分のスタイルに合った気泡埋めを模索してもよいでしょう。

嵌合調整

原型ではパーツがピッタリ嵌っていても型が劣化したり、レジンが硬化するときに収縮してしまって複製したキットではパーツに隙間ができることもあります。嵌合の隙間は最終的な見栄えに影響してきますので、ここも調整していきます。

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レジンの収縮によって鼠蹊部と脚に隙間ができている。

CASE1:隙間が小さい場合

レジンは温めると柔らかくなる特性があり、それを利用します。エンボスヒーターなどでキットとキットの合わせ目を焦げないように温めてからギュッと冷めるまで押しつけると小さい隙間ならこれだけで埋める事ができます。

エンボスヒーターがあればこんなこともできちゃう

CASE2:隙間が大きい場合

上記ではどうしても埋まらない場合はパテを盛って埋めていきます。パテの種類はなんでもいいですが、ある程度粘度があって、かつ硬化速度も早く切削性の良いUVパテがおすすめです。サフレスする場合はレジンと馴染みやすい白いUVパテ、そうじゃない場所は視認性も良い光硬化パテを愛用しています。

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黄色い光硬化パテは視認しやすい。

やり方ですが、まずパテを盛らない方のパーツにワセリン(リップクリームでも可)を塗っておき、パテがくっつかないようにします。次にパテを盛る方のパーツを400番くらいのヤスリで少し荒らしてパテの食いつきを良くさせてからUVパテを盛るのですが、UVライトが届かない部分しか固まらないため外周部にのみ盛り付けましょう。そしたらパーツを合わせてからUVライトを当てて硬化させると隙間がパテで埋まりますので、余計な部分をヤスリで削り取って整えたら終わりです。

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合わせてはみ出た部分のパテを削れば隙間はもうわからない

歪み取り

レジンは硬化するときの収縮などで歪む事があります。特に大きいパーツは顕著ですので歪みをとり必要が出てきます。小さいパーツであればエンボスヒーターで温めてしまえば良いですが、大きい場合は鍋を用意して茹でて歪みを取ったりします。この際は食べ物と別の鍋を用意しましょう。

大きいパーツは歪みを撮るだけでも大変。火傷に注意しよう。

 

表面処理は地味な作業が続きますが、大事な工程です。また一番キットの造形を観察する工程でもありますので、私はこの工程で塗装のイメージを膨らませるようにしています。

 

次回は離型剤落とし&表面処理のトラブルシューティング編です。